2008年4月8日火曜日

森鷗外「伊沢蘭軒」

「・・・これに似て非なるは、わたくしが渋江抽斎のために長文を書いたのを見て、無用の人を伝したと云ひ、これを老人が骨董を掘り出すに比した学者である。此の如き人は蘭軒伝を見ても、只山陽茶山の側面観をのみ其中に求むるであらう。わたくしは敢て成心としてこれを斥ける。わたくしの目中の抽斎や其師蘭軒は、必ずしも山陽茶山の下には居らぬのである。」
 この作品を、不明の語をきちんと調べながらしっかりと読み通した人は、鷗外ファンを除いてどれほどいるのだろう。まだお読みでない方は、一瞥されることをお勧めする。
 こんな作品を長々と書いてしまって平気でいるこの人は、本当に底知れない人である。

0 件のコメント: