2009年3月8日日曜日

日本人というもの

 現任の在ブルガリア領事が近く離任する。
 私は在外公館というものに対して30年間否定的な評価を下してきた。それがこの年になって初めて彼らと一緒に仕事をするようになり、認識を大きく改めた。これまでこのブログで日本人というものを褒めたことが何回かあったが、それらはすべて大使館の第一線で仕事をしている少数の人たちを念頭に置いたものだった。その少数の人たちの一人が現領事であった。
 俺が俺がとでしゃばらず(これがまた多い。。。)、プロ中のプロ(これがまた少ない。。。)としてのプライドを胸に秘め、ただひたすら職務に励み納税者/国民に奉仕する。この公務員として当然の義務を粛々と、完璧に遂行する人だった。このような人が土台をきちんと支えている限り日本という国はおいそれとは壊れない、そういう信頼を与えくれる人だった。日本人というものがあるとすれば、それが持つ美点を体現するような人物でもあった。
 これはセンチメンタリズムではない。個人的な付き合いは一切なかった。厳しい環境に置かれると、人は生物としての本能からか、単なる表面上の交際(厳しい環境下ではこれは尚更無意味なものとなる)でなく真に信頼し得る人をのみ求めるようになる。友人でなくともよい。そういう人が近くに存在するというだけで勇気づけられる。ブルガリアに暮らし始めて1年半になるが私はまだそういう人をごく少数しか見出していない。
 彼の次の活躍の舞台(実はこういう浮ついたことばほど彼に似つかわしくないことばもないのだが)での更なる成功を祈念しつつ、はなむけのことばとする。

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