2018年7月24日火曜日

「綴方教室」山本嘉次郎(1938)

80年前の日本。その日の食べ物にもこと欠く階層があった。「綴り方」という支えがあった正子はそれを乗り越えてゆこうとしている。しかし、そのようなものを持たぬ子どもたちは一体どうやって耐えてゆけたであろうか。
もう一つ、憾むらくは、正子を支えたものがなぜ「綴り方」であったのか。「綴り方」そのものの持つ力をもっと描いてもよかったのではないか。なぜ「綴り方」でなければならなかったのか。なぜ絵画や音楽やスポーツでないのか、という事である。悲惨な状況の中で何か子どもたちを支えるものが必要だというだけなら、支えられるものでさえあればそれは何でもよいということになり「綴り方」そのものの価値を訴える力に乏しいことになるのだ。
しかし全体に映画作品としては、子役時代の高峰秀子の名演をはじめとして脇役陣もよく、よくできた作品だと言えよう。

綴方教室(1938)

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