河瀨直美監督作品。忘れ難い印象を残す。と言っても、恐らく「俳句のようだ」と評する批評家がたくさんいると予想されるような、分かりやすい作品ではない。しかしよく観れば――そして日本のことをよく知っていれば――分析のための材料はすべて盛り込まれている。むしろ説明しすぎているきらいもある箇所がいくつもある。
私にとってこの作品は、最後の10分、原生林を行く二人を追うハンドカメラの動きに尽きる。作品の総体としては決して高い芸術性を獲得しているとは言い難い。
前から感じていることだが、カンヌ(の審査員たち)の好む(これは今年のグランプリ。河瀨は10年前には『朱雀』でカメラドールを受賞している。)種類の作品は概ね私の好みにも合う。要は、分かりやすさや親しみやすさ等よりも――たとえそれが部分的なものであっても――芸術としての普遍性を有するかどうか、である。
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