2008年2月15日金曜日

『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』

 小津安次郎1932年作品。言わずと知れたサイレント時代の傑作。小津の特徴である固定カットが確立された記念碑的作品としても知られる。
 驚くほどよくできた作品である。小津の天才が遺憾なく発揮されている。
見方によってはベストの作品とも言えるのではないか。彼は1959年に『お早よう』をリメイクしているが、完成度にはかなりの差がある。
 これはまだ未確認の推測に過ぎないが、Kiarostamiが小津に傾倒していることには、この作品に見られる子どもの使い方も深い関連をもつのではないだろうか。
 一つ分からないシーンがあった。家族の食事を整えた「お母ちゃん」が徐に割烹着のポケットからトランプのようなものを取り出しお膳の下でシャッフルする。何しろ76年前(!)の作品である。早く解明しなければ永遠の謎となってしまう。

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