2008年2月13日水曜日

武器としてのことば

 外国語の達人でもあった鷗外の洞察。ここに自身に関する内省も読み取ることができる。
 「僕は子供ではあったが、問答の意味をおおよそ解した。しかしその問答の意味よりは、・・
の自在に東京詞を使うのが、僕の注意を引いた。そして・・は何故これ程東京詞が使えるのに、お屋敷では国詞を使うだろうかということを考えて見た。国もの同志で国詞を使うのは、固より当然である。しかし・・が二枚の舌を使うのは、その為めばかりではないらしい。彼は上役の前で淳樸を装うために国詞を使うのではあるまいか。僕はその頃からもうこんな事を考えた。僕はぼんやりしているかと思うと、又余り無邪気でない処のある子であった。」(『ヰタ・セクスアリス』)

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